みんなで動かす
インターネット

世界中の人たちがインターネットを
支障なく便利に使えるようにするために、
インターネットの裏側では
様々な組織や人が協力し合って働いています。

学習キーワード
標準化RFCIETFICANN回線事業者
インターネットサービスプロバイダー(ISP)

ホスティング事業者

みんなで作るインターネットの「技術標準」
05.01

インターネットが商用化され、誰でも使えるようになって約30年。今やインターネットは世界中に広がりました。2021年には全世界の49億人(総人口の約63%)がインターネットを使用しているというデータもあります。

始まった頃から現在に至るまで、インターネットではさまざまな通信技術が利用者自身の手で開発され、使われてきました。この「使いたいものを利用者自身が自分達で作る」は、インターネットの伝統の一つであり、インターネットが世界中に広がった理由の一つであると言えます。

たとえば、インターネットの通信プロトコル(通信における約束事)を決める話し合いには、誰でも自由に参加できるようになっています。新しいアイディアや技術を思いついた人がそれを提案し、 参加者がみんなで議論を進め、「緩やかな合意(後述)」が取れたらその内容を文書にまとめて、世界中に公開します。
このように、利用者間で共通に使う仕組みや決まりをつくることを「標準化」といいます。標準化は利便性や業務効率の向上、相互接続性などを実現するための重要な手法のひとつです。インターネットの利用者は誰でも、この「公開された文書」を読んで、自分のサービスを作ったり、さらに改良を加えてより良いものにすることができます。
こうした、インターネットの技術標準をまとめた文書を専門用語で 「RFC(アールエフシー) 」といいます。RFCは「Request For Comments(コメント募集)」を意味しており、コメントを出し合うことで、みんなでインターネットを良くしていこうという考え方を表しています。すべてのRFCはインターネットで公開され、誰でも無料で見ることができます。

最初のRFCが発行された1969年4月から2022年4月末までに、9,000を超えるRFCが発行されました。このように、利用者自身がインターネットを良くするための活動に参加し、さまざまな技術標準を開発・改良していくことで、インターネットは成長してきました。

ちなみに、第2~4章の動画に登場した森下先生も、IPv6に関するDNSの不適切な取り扱いがIPv4にも影響を及ぼすケースとその影響範囲についてまとめたRFC 4074を、2005年に共著しています。

インターネットの独特の文化「緩やかな合意」って何?

インターネットの技術標準を作っているIETF(後述)では、すべての参加者の合意を必要としない「緩やかな合意」と、動作する実装が重要視されます。
これには、標準を作るという行為そのものよりも、作られる技術標準が実際のインターネットですぐに使え、機能することを重視するという、インターネット標準化の精神が反映されています。

僕やピコ丸がRFCを書くことも可能なんだね!

近い将来、「教えて!ピコ丸先生」でRFCを解説する動画ができるかもしれないな〜

インターネットを動かすための活動をしている団体
05.02

インターネットは世界中に広がっています。そのため、インターネットの技術標準を決めたり運用方針について話し合ったりする団体も、世界的に活動しています。ここでは、それぞれの活動をしている団体を紹介します。

インターネットで使う技術標準を作る

インターネット技術の標準化を推進する団体

IETF
(アイイーティーエフ)

  • IETFは、インターネット技術の標準化作業を進めるためのタスクフォース(決められた任務のために編成されるチーム)として、1986年に始まりました。その起源は、1969年に米国で結成された、Network Working Groupにさかのぼることができます 。
  • IETFは、国や所属を問わず誰でも参加できます。IETFには個人の立場で参加することになっており、参加者は会合やメールで議論を進めます。議論の結果はRFCとしてまとめられ、インターネットに公開されます。
  • IETFは、会合が年に3回開かれています。日本では2002年に横浜、2009年に広島、2015年に横浜で開催されました。開催時には世界中から1,000名を超える参加者が集まり、議論が進められました。
インターネットの運用方針について話し合う

インターネット資源の運用方針を調整する団体

ICANN
(アイキャン)

  • ICANNは1998年10月に設立された、米国の非営利法人です。ドメイン名やIPアドレスはインターネット全体で共通に使われる「インターネット資源」と呼ばれるもののひとつであり、 ICANNはインターネット資源の運用方針に関する世界的な調整を担っています。
  • ICANNには、国や所属を問わず誰でも参加できます。世界中からさまざまな立場の関係者が集い、インターネット資源の運用に関する課題、今後の方針などについて、それぞれの関係者の立場で議論を進めています。
  • ICANNは、会合が年に3回開かれています。日本では2000年に横浜、2019年には神戸で開催されました。神戸での開催時は世界中から2,000名を超える参加者が集まり、議論が進められました。

他にも、WebサイトやWebサーバーに関する技術の標準化を推進する「W3C(ダブリュースリーシー)」という組織や、IETFの上位団体として活動を支援し、標準化・教育・ポリシーに関する課題や問題を解決・議論する「ISOC(アイソック)」など、さまざまな活動を担う国際組織・団体が活動しています。

インターネットを支えている人たち
05.03

私たちは普段当たり前のように、インターネットを使っています。その裏側では、どんな人たちが関わっているのでしょうか。第2〜3章で学んだ「DNS(ドメインネームシステム)」の図とともに、その一部を見てみましょう。

  • 1
    回線事業者
    インターネットで使うための通信回線を提供する事業者が、回線事業者です。
    回線事業者は光ファイバー、金属のケーブル、モバイル回線など、さまざまな形で通信回線を提供します。インターネットが世界中につながっているのは、さまざまな回線事業者が世界中の海底に通信用のケーブル(海底ケーブル)を張り巡らしたり、通信衛星を使ったりして、インターネットの通信で使うための道を作っているからです。回線事業者は電柱や洞道(とうどう:地下に張り巡らされた通信回線用のトンネル)などを利用して、あらゆる場所に通信回線を引くこともしています。
  • 2
    インターネットサービスプロバイダー(ISP)
    インターネットを利用するために必要なサービスを提供する事業者が、インターネットサービスプロバイダー(ISP)です。私たちがパソコンや携帯電話でインターネットを使う時、ISPのサービスを利用します。例えば、回線事業者の回線を使った接続サービスや、DNSの名前解決に必要な「情報を探す人」、つまり、第3章で登場したフルリゾルバーのサービスなどは通常、ISPが提供します。最近では、回線事業者とISPの両方を兼ねる事業者も増えています。
  • 3
    ルートサーバー運用組織
    IPアドレスを探す旅の起点となるルートサーバーは、管理運用の責任をICANNが負い、それぞれのルートサーバーを担当する組織間の緩やかな連携のもと、各組織が独自に行う形で運用されています。ルートサーバーはアルファベット順にAからMまでの13系列が稼働しており、JPRSではその一つであるMルートサーバーを、WIDEプロジェクトと共同運用しています。
  • 4
    JP DNS運用組織
    JP DNSは「jpの下の階層の管理を誰に任せたのか」を知っている、「情報を持っている人たち(権威DNSサーバー)」のうちの一人です。JP DNSはAからHまでの8系列が稼働しており、JPRSのほか、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)、WIDEプロジェクト、国立情報学研究所(NII)が運用に関わっています。
  • 5
    ホスティング事業者
    ホスティング事業者は、インターネットに接続されるサーバーを提供します。ホスティング事業者が提供するサーバーはWebサイトの開設・電子メールの配送・データの管理など、さまざまな用途に使われます。

他にも、Webサイトの中身を制作する事業者、パソコンや携帯電話など、インターネットに接続する機器を製造・販売する事業者など、さまざまな事業者がそれぞれの仕事を全うすることで、インターネットは支えられています。

いろんな人がそれぞれの立場でがんばっているから、インターネットが使えるんだね!

これからは、感謝の気持ちを肉球に込めてクリック&タップをするよ!

あしたのインターネット、みんなのインターネット
05.04

インターネットの活用範囲は、日々、広がっています。今ではあらゆるものがインターネットにつながるようになり、これまでできなかったいろいろなことができるようになりました。今も、誰もが安心して使える、使いやすいインターネットを実現するための活動が、盛んに進められています。

今後はさらに、インターネットを活用した様々な商品やサービスが出現し、普及していくでしょう。
例えば、道路交通情報を使って自動運転する車、 スポーツ選手と同じ視点でリアルタイムで映像を配信するライブカメラ、買い物中のスーパーから自宅の冷蔵庫の中身を確認できる商品、人間にしかできなかった知的行為(認識、推論、創造など)をコンピューターでできるようにするための人工知能AI(エーアイ)などが、既に実用化され始めています。
インターネットでは今後も、われわれが想像できないような新たなアイディア・使い方・サービスが生まれ、使われていくことになるでしょう。

第1章から第5章にかけて、ポン太・ピコ丸と一緒にさまざまな内容を学んできました。
WebサイトのURLやドメイン名の役割、インターネットでドメイン名を使えるようにするために作られたDNSの仕組み、インターネットを動かし、より良くするための活動をしている様々な組織・団体や、そこで活動している人々。

このように、私たちが当たり前のように使っているインターネットの裏側には、当たり前のようにインターネットを使えるようにするためのさまざまな仕組みがあり、さまざまな組織や人々が関わっています。みなさんがインターネットを使う時、たまにこのことを思い出してみてください。

インターネットは生まれた当初から、みんなが協力し合い、良くしていくことで、より便利に使えるようになることを繰り返し、成長してきました。みなさんがこのサイトで学んだ知識やこのサイトを通じて得た興味や関心が、明日のインターネットにつながっていくことを、心から願っています。

インターネットの裏側では、それを動かすためのいろんな人や仕組みが動いてるんだな~。

みんなで動かしていることや、インターネットが成長する仕組みを知って何か感動しちゃった!

よーし、チェックテストもがんばれよ!ポン太!

そこは一緒にがんばろうよ!!